デリヘル人情劇場『逃げた女 関東編』その2
2002年10月5日30分ほどして、和美はドルチェという店に姿を現した。
明らかに、かばんを持つ手が震えている。
店の前まで付いて来たと思われる、
和美が一ヶ月ほど働いたのであろう店の男性が、
目配せをして去っていった。
「まぁ水でも飲んで、まず落ち着こうか」
こちらが冷静になればなるほど、彼女には恐怖心が増すもので、
コップを持つ手も震えて持てない。
「あんた、逃亡資金うちの金庫からパクったなぁ?5万。
・・・なんで5万なん?おかしくないか?
もっと金入ってたやろ?遠慮したん?
普通はな、飛んで逃げるんやったら、全部持っていくぞ?
それになぁ。あんた他店の爆弾やろ?なんで自分の店に逃げて帰らんかったんゃ?
普通は店に帰ったら、歓迎されて匿(かくま)われるのがスジやろ?
おかしいなぁってずっと思ってたのよね・・・。」
よく考えてほしい。
もし自分があらゆるツケや借金を残して明日雲隠れするならば、
目の前の金庫の金をすべて持って逃げるのではないか?
これからまた知らない土地で、隠れて暮らすのなら、
目先の金が何より大切ではないだろうか?
ましてや、闇金融にまで手を染めている人間。
金銭感覚はすでに麻痺してるハズなのです。
極端に言えば、1万も50万も100万も同じ金に見えておかしくない
実家に黙っている借金があるなら、借金だけでも返しながら
どこかで働くつもりだったろう
それが、なぜおそらく交通費だけにしかならないような5万
という金だけをパクって逃げたのかが不思議で仕方なかったのだ
「とりあえず、今日は遅いからホテル取ってあるから行こ。
送って行くから、で、そのホテルに泊まるのは君だけやから。」
「・・・え? 店長・・・さんは?」
「おれは近くに事務所あるから、そこに泊まる。
明日の朝、また迎えに行って、大阪帰るから。」
「・・・」
「だからな。まだ逃げる気やったら逃げたらエエし、
あんたのこれからの事はゆっくり考えるから
明日の11時に迎えに行くから、自分とゆっくり話して
結論出し。
明日ホテルに迎えに行った時に居たら、その時にちゃんと話
聞かせてくれたらエエから」
うちで働いていた数日間、和美は結構楽しそうに雑用をこなしていた
そう思い込んでいただけかもしれないのだが。
『ワケアリ』の方々を幾人も見てきたが、
この和美は、”ただ”のワケアリではなく、もっと複雑な『ワケアリ』
を抱えていたのではないかと思い、
あえて、和美を試してみようかと考えた。
逃げたくてわざわざ東京にまで来ていたとは思えなかったのだ。
完結編につづく
でりのHPはhttp://www.vesta.dti.ne.jp/~hmhiro/
よろちくどうじょ♪
尚、この話に出てくる団体名、及び個人名、固有名詞はもちろん全て実在しません。
そして、この話をお読みになって万が一被られた被害にたいして、
筆者でりは一切の責任は負いませんので・・・あしからず。
まぁそんなコト有り得ないと思いますが(笑)
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