デリヘル人情劇場「ム所帰りの男」その5
2002年10月30日「勘蔵さん。それでは早速ですが、勘蔵さんに初仕事に行ってもらいます。大阪の西に「塚本」って駅があるんですが、そこで今日面接の待ち合わせに女の子が21時にやってきます。塚本駅には北出口と南出口があるんですが、その女性は南口にやってきます。その南出口を地図で確認し、20時30分までに迎えにいって下さい。」
いきなりあまり土地勘もない勘蔵さんにこの仕事をやってもらうのは
すこし気が引けたが、”ののじい”にも絶対に甘やかすなときつく言われていたので、
勘蔵さんには「面接の女性の送迎」という仕事をやってもらうことにした。
たかが「送迎」であるが、面接に来る女性達は、まず最初に見るその第一印象で、その店に入店する気持ちを決めるという。
とりあえず、勘蔵さんには今回【Brutus】の顔となってもらうことにした。
「え〜と。彼女の服装は白地に黒のストライプの入ったワンピース
ちょうどそこにいる麗華が着ている服の感じですね。
髪型は肩くらい、年齢は22歳ということですので、
その子が何時何分に待ち合わせ場所に来たかをメモしておいて下さい。
で、まずは駅に着いたら事務所に連絡をくれますか?」
「塚本っていやァアッシ知ってますぜィ 昔は商店街があってェ〜下町ってェ感じの所でし。風呂屋の前に肉屋がありましてねェ〜そこの旦那の揚げるコロケがうめェのなんのってェ〜。その仕事、アッシの命に代えてもやり遂げさせてェいただきヤス」
どうも勘蔵さんと話をすると、話が大袈裟になる。
送迎に”命”をかけられても困ってしまうのだが、
例によって麗華が
「カンゾーさん。ソレデコソ男デス!ガンバッテクンナセエ〜」
なんて真似て言うものだから、勘蔵さんも調子に乗ってしまい、
拳で左胸をドンドンと叩き、
「姐さん。この勘蔵にまかせてくんなせェェ〜」
などと返し、やはり事務所は任侠時代劇と化してしまうのだった。
「じゃぁくれぐれも安全運転には気をつけてくださいね」
「へィ。大事な客人にキズ付けるようなヤボな真似はいたしャせん。
でァでァ、行って参りャス」
勘蔵さんは70歳とは思えない足取りで事務所を後にした。
勘蔵さんの乗った車が出て行ったのを確認し、
時間に空きのあったドライバーが
「では行ってきま〜す」と勘蔵さんの尾行に出て行った。
やはりなんと言ってもム所帰りの70歳だ。
心配しない訳には行かない。土地勘だってここ10年でガラッと変わっている。
こちらが面接の時間に遅れる訳には絶対にいかないのである。
勘蔵さんが面接の女性の送迎に出て30分くらい経った頃、
事務所の電話が鳴った
「あぁ勘蔵でございヤス。
只今、現場ェ到着しやしたァ〜獲物はまだガラ表してャせんゼ」
1時間程は到着にかかると思っていた勘蔵さんは、
以外にも30分で現場へと到着していた。
後から出たベテランのドライバーからの連絡はまだないことから、
勘蔵さんは抜かされることなく、現場に到着している。驚いた
しかし、獲物はまだガラ表してない・・・と確かに言った。
彼は一体ナニモノなのか?ヒットマン?
勘蔵さんが木陰からライフルの照準を睨み、獲物に狙いを定めている
そんな画がふとよぎった
「早かったですねぇ〜驚きましたょ。
まだしばらく時間があるので、車内でゆっくりしておいて下さい。
どもどもお疲れ様です。」
「へィ。もうこのあたりは何て言いましょう、アッシの庭でし。
目閉じたってェ運転できャスぜ 親分。
それじゃァしばらくココで客人が現れるのォ待たしていただきャス。
ごめんなすってェェ」
ドライバーとしての「筋」があるかもしれない・・・
少し安心し、受話器を置いた。
デリヘル人情劇場「ム所帰りの男」その1は10月15日
デリヘル人情劇場「ム所帰りの男」その2は10月16日
デリヘル人情劇場「ム所帰りの男」その3は10月20日
デリヘル人情劇場「ム所帰りの男」その4は10月23日
の日記にUPしてあります
コメント