「名前」という魔法
2002年11月12日今更ながら「千と千尋の神隠し」をレンタルしました。
DVDでの映像は赤味がかっているなんていう報道が一時話題になったが、元の映像をすでに忘れているので、全く気にもなりませぬ。
主人公の千尋は現代に住む10歳の女の子。ある日、両親と一緒に田舎町に引っ越す途中、不思議な場所に迷い込む。千尋は嫌がって「帰ろう!」と言うのだが、両親は面白がってどんどん先に進んでしまう。
トンネルのある建物を抜けると、一面に原っぱが広がっていた。
そこにはもうひとつの「世界」があった。
「忘れないで。私は千尋の味方だからね」
ハクという少年が言うこの一言「忘れないで」がこの物語のキーワード。
「もうひとつの世界での自分の名前を忘れたら、もう戻れなくなる」
ハクはこう付け加えます。
24年ぶりに帰国した「北朝鮮拉致被害者」の方々はどんな思いでこの二十数年間を
「もうひとつの世界」で暮らしてこられたのだろう。
与えられたもう1つの名前で、本来の自分を隠し生きていた方々。
日本の調査団が北朝鮮へ身元調査を行った時、他の拉致被害者の名前を尋ねられても「北朝鮮名」しか知らなかったので、気が付かなかった。
という事を言っておられたのが印象的だった。
本当の名前を奪われ、全く知らない世界で暮らさずを得なかった被害者の方々。
日本に帰国することができ、一番うれしかったのは
「本当の自分の名前」
を自らの口で名乗り、また呼んでもらえた事ではなかったのか?
そんな気がした。
また、風俗で働く女性たちも「源氏名」という「もう一人の自分」を造り働く。
いらぬトラブルを避けるために源氏名を名乗る事が多いのだが、
彼女たちは
「自分の本当の名前を忘れてしまいそうで怖い」
そう言っていた。
経済的理由で働く者が大多数の風俗業界。
ここでは本当の名前を「忘れてしまう」人が多いのだ。
本来は金に困っているハズでも、
日払いで手にする「現金」に目が眩む。
本来の目的を忘れ、「源氏名」の世界の自分に呑まれてしまう。
いつしか本当の自分を忘れ、風俗という世界から抜け出せなくなる
その場の金に埋もれ喜び、困っている本来の自分からは逃れ現実の世界に引き返せなくなった者を多々見てきた。
本当の名前を忘れ去ってしまった者の最期はみな虚しい結末を迎える。
こんな極端な世界だけでなく、
日常に生きているすべての人にも言える事であって、
「本当の自分」
というものを忘れてしまう事は本当に恐ろしい事なんだ。
はせい【派生】とは、本体から幾つかのものが分かれ出ること。
自分を高めるためにあらゆる自分の可能性を探り自己を派生させて行くことはすばらしい事であるが、
本体である「自己」を忘れてしまってはすべてが無意味になる。
この世にたった1つしかない「本当の名前(自己)」を大切にしよう
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