勘蔵さんは店の従業員にすぐに馴染んでいった。
なんといってもしゃべり口調が女性陣に大人気だった。

「〜でし」「アッシは〜」「姐さん〜」など、任侠映画でしか聞いたことのない台詞まわしが勘蔵さんの口からは次から次へと出てくる。
そしてなにより、勘蔵さんの話にみな釘付けになる。
ム所での話を勘蔵さんは時間の空いた女の子に紙芝居のように分かりやすく、また、冗談を交え話す。

「ム所で風呂入る時はァ、浴槽の淵にこゥやって手を揃えてまず置きャしてねェ、看守の号令で一斉に15人くれェでドボンてェ入るのが決まりなんですがァね 新入りの若ェ奴が号令の前にてめぇだけ勝手にドボンってェ入っちまったんだァ。するってェと看守はカンカンになってそいつを風呂から引っ張り出しやしてねェ
連れて行こうとすると、ステン!ってェ看守が転んじまったんでし。看守の失敗てのはアッシらにとっちゃ〜そりゃスカッとする出来事なんでェ大笑いだァ そりゃァ気分がいいなんてもんじゃァない がはははは。でもねェ姐さん。その笑ったアッシらはそれだけで反省部屋ってェ独房送りなんす。ム所って所は感情さえも表せねェおっかねェ所なんでし」

「独房!やだぁ〜そこ暗いのぉ〜?あたし暗い所絶対にダメぇ〜」
「勘ちゃんすぐそこから出してもらえたの?」

すでに勘蔵さんは「勘ちゃん」と呼ばれ、

「アッシはいい子にしてたんでェすぐに帰って来ャした がははは」

なんて言い、目を細く屈託のない笑顔で受け答えをする。
勘ちゃんと呼ばれるのにも、マンザラでないようだった

こんな笑顔で笑える男が、
なぜ13年ものム所暮らしをする羽目になったのか・・・
一緒に笑いながらも、そのことが妙に納得がいかない。
そう思わずにいれない従業員一同であった・・・
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かなり久々のデリヘル人情劇場である(笑
過去の話は下の月一覧で探して頂くか、
HPのデリヘル人情劇場『放免桜』を見ていただくと分かると思います。


秘密は夜にでもUPします

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