デリヘル人情劇場『放免桜』その10「シホという女?」
2002年11月21日11月22日分からの続きです。
先にそちらを読んで頂いた方がわかりよいです
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ホテルをチェックアウトし終え車に戻ると、勘蔵さんが立っていた。
我々に気が付くと、勘蔵さんは股を大きく広げ言う
「こりゃぁ親分さん お疲れでやす。麗華お嬢さんに言いつけられやして、
念のためにここで待つようにと言われやして参りやした」
勘蔵さんのしゃべり口調に徐々に仁侠映画の世界に引き込まれつつある
【Brutus】なのだが、勘蔵さんはつい先日うちに来たム所帰りの老人。
いったいこの存在感は何なのであろうか?
「始めまして。今日からこちらでお世話になることになりました、
私 坂下志穂です。宜しくお願いします」
シホは勘蔵さんに丁寧に頭を下げた。
勘蔵さんはシホをしばらく見つめ、ぽつりとつぶやいた
「なんてぇベッピンな娘さんでぇ・・・・・。」
お得意の仁義を切ることすら忘れるほどまさに「見惚れる」といった感じだった。
勘蔵さんが乗ってやって来た車は無線車だったので、我々はこちらに乗り換え、勘蔵さんには私の乗ってきた車で帰ってもらうことにした。
この無線車は、店で麗華が電話での受付をしている様子がダイレクトに聞こえるようになっている優れものである。電源を入れるとすでに「勘蔵さん口調」にどっぷりとハマってしまっている麗華がドライバーに指示を与えている様子が聞こえてくる。
「あかねチャンの次ノイキサキハ タニマチキュウチョーメ ホテル○○デヤシィ OKデシカ?ヘイヘイこりゃーヨロシクデャシ」
片言の中国語が混じり目茶苦茶だが、機嫌よく仕事をしている様なのでよしとしよう・・・
「おもしろそうな人が沢山いますね〜」
シホはケラケラと笑っていたが、しばらすると自分の過去を話し始めた。
「私は5歳の時に両親が離婚して父親に育てられました。
離婚と言うか、母は父の元を夜逃げ同然で出て行き、それっきり一度も会ってません。父は私が物心ついた時には酒に溺れていて、幼いながらに母が出て行った理由はこれだなぁって分かってました。母の思い出と言ったら父に殴られていた事しか思い出せないくらいだから、いつも殴られてたのだと思います。母が出て行ってしばらくしてから、父は事件を起こして刑務所に服役することになって、でも私は少しホッとした。私も何度か殴られてたし・・・
私はそれから施設で暮らすようになって、そこでも何度かつらい目にも遭ったけど、今から思えば楽しかった。父からは手紙が週に1回は来てて、いつも反省しているとか、あたしに会いたいとかって内容で、私は父はちゃんと更正してるのだと思ってた。高校に入ると父が帰ってくることになり、父ともう一度一緒に暮らす事にしました。でも父は少しも変わってなかった・・・
それどころか、あの頃以上に酒に溺れて挙句の果てに私をレイプした・・・。私はすぐに家を飛び出して、それからはよくある話・・・グレて売春してお水やって、シンナー吸ってるのを見つかってクビになって風俗入って。
男が出来ても男性とどうやって付き合ったらいいのかわかんないのね・・・。男がいつ殴ってこないか不安で、でも誰かそばにいてくれないともっとダメで、だから男を私のもとに引き止めておきたくて、風俗で稼いだお金は全部男に貢いで・・・。
でもその男は他にも貢がせてる女が何人かいるのが分かったのね。バレても男はそれがどうした?って感じで「他の奴はお前よりも何万も多く貢ぐぞ」って言った。愛の大きさは金に比例するんだって思って、むきになって仕事して全部貢いで・・・。でももう疲れちゃって・・・私にはどこにも居場所がない・・・何を信じたらいいのかもわからない・・・自分を強く持てば持つほど自分が壊れていく」
シホは車の中で泣き崩れた
つづく
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