"タカシちゃん"はソファーにゆっくり腰を掛けるとペコリと首だけでお辞儀をした。

「私の横に居るのはレイカと言います。今日は宜しくお願いします」

明らかにバツの悪そうなタカシちゃんはもう一度レイカに向かいペコリと頭を下げる。
こちらもかなり『バツ』が悪いのだが、母上様だけはどうやらご機嫌がよろしい。

「タカシちゃんもお勉強ばかりじゃ頭が偏屈になってしまうゎ。
今日は社会勉強と思って色々経験なさいね。」

我々は社会学習の教材と言ったところであろうか・・・。

「それでは時間も時間ですので、レイカと一緒にお部屋へ行ってもらいましょうか。
後は彼女におまかせしましょう。お母様、よろしいですか?」

お母様はレイカにくれぐれもよろしくと丁寧にお辞儀をし、
タカシちゃんに「がんばって!」と励ましの声を声を掛けるのである。

腹を括った麗華はタカシちゃんの手を取り、隣の部屋へと消えてゆく・・・。

「それでは私は外で待ちますので」

そう言おうとする矢先にお母様は
「温かいお茶を入れ直しますので、どうぞおくつろぎ下さい」
と台所へと消え行くのである。
くつろげる訳がない・・・。

「実はね、タカシちゃんのお部屋を掃除してましたらね、あの〜なんて言いますの?その〜エッチな雑誌というものが出てきましてね、私も理解はある方なのですが、それがもう沢山その〜なんですか?エッチな本が出てきましてね、わたくしなんだか怖くなってまいりましてねぇ。タカシちゃんのお勉強に差し支えがあるんじゃないかしらって・・・。もうそちらに頭がいってしまって、お勉強に支障があると単身赴任中の主人に私が怒られますし、タカシちゃんにヘンな虫が付いて悪い道に行ってしまいますとそれこそ困ってしまいますゎ・・・・。
ですのでお宅にお電話させて頂きましたの。そちらでしたら『お金』で後腐れなくしていただけるのですゎよね〜」

たしかに我々はお金を頂き、男性方の『欲望』を満たす。
後腐れももちろんない
が・・・
ここに来ているのは当店自慢の「クレーム処理班」
プロ中のプロの風俗嬢である。


「きゃぁ〜!タカシさんのオ●●●ンって大きいわねー!」

あぁ・・・。また始まってしまうのであります。
うちのクレーム処理班達は、私と同行で仕事に向かうときには『必ず』ワルノリをする。

普段なら絶対に男性の耳元で話すような会話がなぜかリビングにこだまする。

「いゃ〜ん!タカシさんのえっち〜!」

母上が脳震盪にでもなって倒れてしまわないかドキドキする。

「そこは  あ・と・で(はぁと)」

そんな台詞をでかい声でしゃべるヤツなんている訳がないのである。
麗華はリビングに居る私と母上に聞こえる様に言っているに違いない。

「いゃ〜。息子さんもお元気そうでなによりですねぇ〜」

こんな事を真面目な顔をして話している私を想像して楽しんでいるのだ。


そうこうしていると、パンツ一丁のタカシちゃんとバスタオルを一枚巻いた麗華が部屋から出て、風呂場へと向かうためにリビングを通り抜ける。

母上様はまたもや
「タカシちゃんガンバッテ」
なんてわが子が風俗嬢と風呂へ向かうのを応援するのである。

どうやら私のキャパを超える勢い・・・。
どう考えてもこの家は、世界でも稀に見る居空間になりつつあるようだ。
ぃや。確実になっている。

麗華もついに思考がすっ飛んだのか、

「お母サマ。まかせてクンサイ」

なんていつもの口調に戻ってしまっている。

「クンサイじゃなっくって、それを言うなら『くんなせぇ〜』だろぉ」

そんなツッコミを入れる余裕さえないのは言うまでもないのである。。。


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