火曜サスペニス劇場「トラック野郎の男」その1
2002年12月10日暗い闇夜には様々な人間が渦巻いているようでして
一本の電話が鳴ったのは、秋も深まる或る日の事だった。
「有難う御座います。【Brutus】です。」
いつもの通りに電話を受ける。
「新聞見たんやけどな。一人頼むわ」
「ありがとうございます。ではまず、お客様のお名前、ご住所、連絡先をお願いします。」
「名前は、矢野。矢野鉄二。場所は名神上りの吹田インターチェンジゃ。携帯は・・・」
「お、お客様ぁ。え〜 その、 吹田インター? ですか・・・!?」
「おぅ。アカンか?ワシ トラック乗りゃ!大型のな、トラック!運転席結構広いでぇ〜!ナンバー言っとこか?え〜大阪11 さかなの「さ」 ●●●●」
「お、お客様ぁ。いや、その〜。あのですねぇ、以前にこのようなお店にお電話されたことっておありでしょうか?」
「あるある!みんなトラックや言ったら断りよる!でもあんたところの広告は『どこでも迅速出張いたします!』いうて書いたあるやろ?あんたとこもトラックは無理か?」
デリバリーヘルスはお客様のご自宅、もしくはご宿泊先に女性をお連れするサービス。
トラック野郎からの依頼は初めてであった。
矢野鉄二と名乗る男は推定年齢35歳、コテコテの関西弁が耳に残るが、口調が実に穏やかで、憎めないタイプ・・・。と言うのが電話対応での第一印象だった。
「いや、正直言いまして私の店でもトラックからお電話頂いたのは初めてのケースでして、特殊なケースですのでまず、OKする女の子を探しまして、5分後に矢野様に折り返しお電話させていただく、ということにさせていただきたいのですが?」
「おぅおぅ!OK!ほんなら待ってるさかいに、連絡ちょうだい!でもブチャイクな子しかOKせなんだら、無理に来てもらわんでエエしな!べっぴん頼むゎ!べっぴん!無理いうて悪いな!よろしゅう!」
実に憎めない。
こういう私的に好きなタイプの客には是非ともいい女性をつけたいというのが人情。
身勝手なのである。
早速、今まだ客にはついていない移動中の女性に連絡を取る。
本日はうちのクレーム処理班、イレギュラー客のエキスパートあかねは、予約とクレーム処理でこれ以上の予定は入れることは出来ない。
「もしもしシホ?実は今トラックの運転手って人から電話があって、今から自分のトラックに一人来てほしいって言ってるんだわ。安全確認は万全に取るからさぁ、イッチョ行ってくれんか?」
こういう時には、グズグズ文句を言いそうな女性には電話はしない。
要するに、「あぁ、私はいまからヤな客のところへ行かされるんだ!」
と思うであろう女性には電話はせずに、
「ややこしいそうな客だから私に行って!って電話してきたんだ。」
と、コチラの真意を分かってくれる女性に電話をする。
もちろん、「行かされるんだ」と思って当たり前なのだ。
現に初めてのケース。
運転席にはシャワーもなければ、ベットもない。
無理に行かせて、質の悪い仕事になると女の子にとっても、店にとってもメリットは何もないのだ。
「じゃあドライバーさんに言って、すぐに事務所戻りま〜す!」
気持ちのいい仕事と言うのはこういう事を意味する。
しかし、気持ちいいなんて言ってられなく、まず第一にシホの安全のことそして衛生面のことと問題は大きい。
すぐさま矢野鉄二にOKの電話を入れ直し、スペシャルバージョンの用意にとりかかる。
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