部屋の前まで来ると、ドアの中から口論する声が聞こえた。
が、このまま部屋をノックしたところで鍵が開く訳でもなく、どうしたものか?と悩んでいた。何しろコチラは盗耳君で聞いていただけであり、2人のやり取りは彼からすると知っているはずもなく、騒ぎを聞いてやって来たなんてコトは言えないのである。
しかしこのクソ俳優だけは懲らしめてやらねばならないのである。
人の店の従業員をド汚い侮辱の言葉で貶し、殴ったのである。
もしシホの方が悪かったとしても、まず彼女をかばい助け出すのが店長としての務めである。
しばらく良い方法を考えてはみたものの、案が浮かばない。
まぁこうなればなるようにしかならない・・・。
コンコン・・・
部屋をノックしてみた。
コンコン・・・
もう一度。
しばらくすると俳優※※が自らドアを開けた。
まず少し開いたドアから部屋に片足を突っ込み入れる
ドアを閉められないようにする為である。
「店の者ですが、傍を通ったら何やら口論が聞こえたように思いまして、もしかするとウチのシホが何か粗相でもしたのでないかと心配になりまして・・・。
大変失礼とは思いましたが、ノックさせていただきました・・・。」
「いや、何もない。時間までまであるだろうだろ、心配はいらないので帰ってくれ」
「そうでございますか・・・。申し訳ありませんでした。
では一度、シホをここまで呼んで頂けますか?話が少しだけありますので、
こんな時間に申し訳ありません。」
「いや、もう彼女は横になっているので帰ってもらえないかな・・・」
ドアを強引に開けようとすると、奥からシホが顔を覗かせた
そのシホの口からは少しではあったが血が流れていた。
「怪我してるようですが、何かありましたか?
ここでは何ですので、中に入れさせてくださいますか」
強引に部屋に入る。
「申し訳ありませんが、何故シホが怪我しているのか説明願えますか?」
「いやぁ、少し張り切りすぎてね、私の頭がシホちゃんの顔に当たってしまったんだ。申し訳ないことしたねぇ。それで今慌てて怪我の手当てをしていたところだったんだよ・・・。オレもまだ若いな」
さすが俳優と言うべきなのか、動揺もせずウソがすらすらと出てくる
「それでシホが泣いているという訳ですか・・・。
この子はウチでも一番我慢強いヤツなんですがね、頭打った位で泣くようなヤツじゃないんですよ・・・。
それしきで泣くようじゃお客様のご希望のプレイなんて勤まるはずがないですからね。
『プレイ中』で泣くわけがないんですよ・・・。
泣くとすると、嫌と言うのに強引に本番行為を強いられるか、卑劣な侮辱、それか『プレイ』とは程遠い暴力だけです」
俳優※※の顔色が変わる
「お前、するとオレがこの子に暴力を振るったとでも言いたいのか!?お前がこの店の責任者か?客に対してなんてこと言う店なんだんだよ!オレとこの子の付き合いはお前の店に来る前からの長いものなんだよ!邪魔だからさっさと出て行け!」
頭から湯気が吹き出るほど腹が立つ。
ニヤつきながら言い放ったこの言葉は一生忘れない
「俳優のくせに芝居がクサイんだょ・・・。
お前何様だ?付き合いとかって言葉うれしそうに使ってんじゃねーぞ
これは仕事なんだよ・・ただの仕事。
あんたのような薄汚い客でも我慢して客に接客しないといけない情けない仕事なんだよ!でものぅ、アンタのように芯から腐りきってる情けないヤツと一緒にすんなよ。こっちは胸張って情けない仕事やってんだよ!」
空気が一機に凍る
言い過ぎたか??
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