風俗嬢は接客のプロである。
一癖も二癖もあるどんなお客に対しても常に自分の身を切り売りしなくてはいけない。
嫌な客に対しても笑顔とサービスの手の弱めることなく、客に自分を売り込み好きにさせる。
『擬似恋愛』をさせることにより自分だけの客にし、指名を取る。
指名の数はそのまま収入に跳ね返る。

金に追われ当店【BURUTUS】にやってきた者達の生きるすべである・・・・。

『オヤブンさん、さとみチャン今日 ドウ スルでス?』

あまりに色々ありすぎ、神戸の達也兄からウチで働くように言われ連れて来たさとみのことを忘れていた。

時計の針はもう午後5時を指していた。

「隣のビジネスホテルに泊まってもらってるから迎えに行ってもらえる?」

「アノ、さとみチャンモウ来てるアルデス」

相変わらずの中国語訛りのしゃべり方をする麗華の後ろにさとみが座っていた。

「じゃぁ今日は最初だから、オレがドライバーで一緒に回るから麗華ウチの常連に営業入れてくれ。一緒に回りながらウチのやり方の説明するから」

「アイヨーでし!」

常連と呼ばれるお客には『固定客』と『浮遊客』と呼ばれる客がいる。

『固定客』とは、一人の風俗嬢に付いている客で、毎回同じ風俗嬢を指名してくる。これは所謂『擬似恋愛』にハマッタ客であり、その風俗嬢だけの客である。ウチのNO1であるシホで言うならば、彼女が相手をする客は9割以上が彼女の『固定客』である。ウチに来る前の店からごっそりとお客ごとやってきており、新規の客の客も軒並みシホの『固定客』となっている。予約だけで向こう2ヶ月の予定が埋まってしまうのだから、固定客を掴むか掴まないかの違いがはっきりと出てくるのである。

一方、『浮遊客』とは特定の風俗嬢を決めていないが当店の客である常連を指す。
毎回違う風俗嬢と遊びたいと思う客も勿論いるわけであり、なお【BRUTUS】を信頼してくれている客である。
それとともに、未だ自分の好みの女の子に出会っていない客も『浮遊客』である。

初めてウチにやって来た者は、まずこの『浮遊客』の中でも質の良い客に「新しい子が入った」と案内の電話を入れ、その客の相手をしてもらうのである。
初めから素性のわからない客の相手をして嫌な思いをさせてはこの世界続かないのである。

午後5時半、さとみの今日の予定も決まり出発となる

「おいあかね!あかねも今日はオレの車な!ほいじゃぁ今日もみなさん頑張るかぁ!」

各ドライバーと事務所に出勤してきている風俗嬢達との簡単な本日のミーティングをした後、営業開始となる。

「ほいじゃぁミク行ってくるからな!おとなしくお留守ばんしてんだぞ」

「あい。おやぶんさんおしごとがんばってね」

ぴょんぴょんと飛び跳ねながら大きく手を振って笑っているミクを見ていると、
あかねやシホ、並びに当店の従業員がミクに癒されるのが少しわかる気がした。


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