「今月末にミクは施設に預けることにしたから・・・
これ以上ミサキを待ってももう無理だろ
何よりも、ここはミクにとって環境が悪いしな、皆には悪いけどミクをどこの施設に入れるかは一切言わない。
これは今後のミクのためだ」

仕事前の簡単なミーティングの時間に、このことを当店のレギュラー陣に話をすると一斉に不満の声が上がった。

「じゃぁミクちゃんが施設に行った後にミサキさんが帰ってきたらどうなるの?」

「それは施設に入れる前に施設側と話をして決めるよ。
オレ自身はもう会わない方がむしろミクにとってはいいことかもしれないと思ってる。」

「そんなのあんまりじゃない!」

季節は春に近づいてはいるものの、まだ肌寒い。
しかし事務所の中は険悪でじめっとした空気が流れていた。

「あんまりなのはどっちじゃい!」

ミサキが居なくなってからというもの、睡眠時間はめっきりと減りストレスと疲労で溜まっていたイライラが一気に噴出したかのような、自分でも驚く程の大声に少し戸惑った。

「夫と離婚した矢先に我が子を捨ててウチの常連と失踪した人間の方があんまりとちゃうんか!?
どんな理由にせよ、我が子を残して連絡もなしに3ヶ月も放ったらかしの人間に、もう一度母親をやり直すことが出来んのか!?
母子の絆よりも男を取ったと思われても仕方ない状況とちゃうんかい!」

「人間何度でもやり直す気持ちがあればできるって言ったのはでりさんじゃない!
ミサキちゃんがやり直したいってここに帰って来てもミクちゃんが居なくて、裁判所の決定とかで会えなくなったらでりさんの責任だからね!
私達だって生半可な気持ちでミクちゃんをここで預かってるんじゃない!
馬鹿な頭でも少しは考えて行動してるの、私達に何の相談もなしに一方的に決めるのはあんまりじゃない!」

「なぁ、ここがいつまでもあるってわけじゃないんだぞ?
お前らもこの仕事をずっと続けていく人間じゃない。
そんな前提でウチはスタッフを含め全員がこの仕事をしている
ミクだけがいつ帰ってくるかも分からない母親を待ってここに留まり続けるわけには行かないんだよ・・・。」

「ミクちゃんカワイソーデシネ・・・。
レイカ悲しいアルョ」

自分の感情をそのまま素直に声に乗せる麗華の一言に、
自分の幼い頃をダブらせたのか、
それともミクの行く末を案じたのか、
数人の者達がすすり泣いた・・・。


この発表をした後、
今回の出来事に”糸”を引いているかもしれないと思われていた『彼女』が
「2日間ほど風邪のために休ませてほしい」
と言ってきたのはそれより3日後のことだった。

事件の尻尾が見えた・・・。


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