何かヤマシイ事をしている訳ではないのだが、
人を尾行(つけ)て歩くと言うのは後ろめたい気分になる。

彼女は自宅から10分ほど離れた新今宮駅近くのスーパー玉出へと入った。

「勘蔵さん。ヤツは今宮駅の玉出に入りました。車止(よ)せてくれませんか」

「お嬢さんただの買い物でヤスかね?
わかりャシた。直ぐに車付けヤスゼぇ」

当店【BURUTUS】の顧問でもある”ののじい”は探偵を生活の糧としている。
”ののじい”はいつもこんなことをしているのか?
人の後をツケルのがこんなにも難しいとは思わなかった。
私には探偵などという職業には就けないだろう・・・。

「親分さん。車は入り口の北ッ側に停めてアリヤスんで」

彼女がお菓子やらペットボトル飲料などを買い込みレジへと向かったのを確認し、一先ず車へと戻った。

「お嬢さんがこのままマンションに戻ったとなるとチット困ったことになるんじゃないですかィ?」

「そうですね・・・。
でもスーパーに行くだけの格好じゃないと思うんですけどねぇ・・・。
このまま何処かに行ってほしいような、でも真っ直ぐ家にもどってほしいような・・・ 複雑な心境ですよ」

今回の出来事でウチの内部に内通しているヤツがいるんではないか?
そう疑ったのは私自身ではあるが、そんなヤツが本当はいてほしくない
そう思っているのも事実であった。

「親分さん。お嬢さん出て来ヤシタ・・・。」

なぜこんなにも緊張するのだろう?
彼女に気付かれはしないか?
彼女がこの後どこへ向かうのか?

彼女が姿を現した瞬間、思わず座席から身をずらし姿を隠そうとしていた。

「誰かを待ってるんじゃァねェですかね・・・。」

彼女は道の端でペットボトルの蓋を開け、
誰かを待っているのかジッと立ち続けていた。

「じっとしてられちゃァアッシらの車がバレちまいそうデシ・・・
お嬢さんは何待ってるんでヤしょうか?」

そんな話をしていると、彼女は手を挙げ一台のタクシーに乗り込んだ。

「勘蔵さん運転代わります。
ここから家までタクシーに乗るヤツはいないでしょう。
いよいよ動き出しますよ!」

「ヘイ!見失わないで下さいゼ親分さん!」


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