「あの日ミサキちゃんはミクちゃんをウチに預けるために出勤してきてて、
レイカちゃんに常連の多田から自分の携帯に呼んでくれるって連絡があったってウソついて、隣のホテルに行ったの。」

「でもオレはホテルのオバチャンに二人で入っていったのを確認したぞ?」

「その男は私の友達で、後で誰かがあのラブホに聞きに来ると思って一緒に入ってもらったの・・・。」

「で、30分程でチェックアウトしたって訳か・・・。」

「そう」

その後ミサキは多田という男と二人でこの島にやって来て、
男はミサキを置いてどこかに消えたという。
ミサキがホテルに手紙を残して行ったのも、あかねの入れ知恵だった
必ず戻るので探さないでくれと書かれた手紙を見て、もし何事も無く帰れたなら、理由を言えば私が許すであろうと考え、
また、いつまでたっても戻らなかったら本格的に私達が探してくれるだろう。
そういうあかねの『読み』であった。

ミクさえウチに居れば、ミサキは我々の記憶から消えることは無く、またミクの安全も保証される。
予想した結果となったものの、あかねの読みと行動力にはある意味敬服さえする。

「それで、磯屋って言う置き屋には誰が行くんだ?」

「誰って・・・・」

言うまでも無く、、、という目が突き刺さる。
「もしもだぞ、そんなことはこんな近代化したご時世であり得ないとは思うけどよぉ、もしもミサキが何処ゾの誰かに金で売られてココに来てるということだったらだぞ、こんな船でしか渡れない島からどうやって連れ出すって言うんだ?」

「気合!」

スナックという名目の置き屋が開店するまであと僅かの時間しか残っていなかった・・・。


「でり坊、お前の言ってた多田って男のぉなんとか居場所分かったでのぉ」

今夜はミサキと接触することを諦め、3人でああでもないこうでもないと
宴会気取りで話をしていると、ののじいから連絡が入った。
物事は切り替えが大切である。

「あぁ鎌田さん!多田はひょっとすると三重県ですか?」

「・・・。
何故分かったんだ?そうじゃ、三重の○○におるでのぉ
三重に△◇組ちゅうのがあってのぉ、たいそうアコギな事やっとるらしい。
でのぉ、多田ちゅう男はそこと一枚噛んでるみたいじゃのぉ」

「私と勘蔵さん今、三重に来てるんですよ。
明日ミサキに会えるかもしれません。」

「おぉ!勘蔵も一緒か!
悪いがのぉ、ちょいと勘蔵に代わってくれんか?」

電話を勘蔵さんに渡すと、勘蔵さんは熱心にウンウンと頷いていた。

「あのクソガキがそんなコトタァしてヤシたか!
旦那ァ、ここはアッシに任せてクダセェ」

勘蔵さんは頭に来た様子で電話を切った。

「親分サン、アッシはちょいとこの辺りじゃぁカオが利きヤシテ、
多田とか言うオトコの事タァアッシに任せチャァ頂けャセンか?」

「はぁ・・・。
分かりました。お願いします。」

「アッシは明日一番の船で港へ行きヤス。
大船に乗った気持ちで親分サンはァミサキの姐さんのことだけに集中してクダセェ〜」

なんだか意味が良く分からないのだが、そのミサキのことが一番頭が痛いのである。

「じゃぁちょいと外でミサキの情報でも聞いてきます。
あかね、ミサキはここでは何て名前で働いてんだ?」

「・・・」

「え?」

「・・・あか・・ね・・」

「え!?」

「だから、あかね!」

「ほぉ〜。『アカネ』ねぇ〜。いい名前じゃねぇか!」

伊勢海老の殻が飛んで来るのをすかさず避けて大笑いした。



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