次の日、『磯屋』のおばさんに言われた通りの時間に店へ行くと、
ミサキの寝泊りしているらしい部屋に通された。
どうやらここでのシステムは女の子の部屋に男性客が訪れ、その後は『自由恋愛』という名目のプレイが行われるようだった。

「直ぐに”アカネ”ちゃん来るからちょっとだけ待ってて下さいねぇ〜」

通された部屋にはミサキはまだいなかった。

部屋には生活感が漂っている。
客が土産に持ってきたのであろうか?統一感のないぬいぐるみや雑貨が所狭しと置いてあった。

ここでミサキはどんな気持ちで生活をし、自らを切り売りしていたのだろう?
ふとそんなことを考えた。

10分程だったであろうか?
部屋でミサキを待っていると、階段を上がる足音が聞こえた。

自然と鼓動が激しくなった。

「お待たせしてすみませんでした〜。」

3ヶ月ぶりに見たミサキはなんだか痩つれて見えた。

明るく振舞うミサキの声とは裏腹に、私と目が合った彼女の顔はたちまち蒼白になり、その後紅く染まっていった。

事の事態を理解したのかミサキは咄嗟に昇ってきた階段を引き返そうとする。
そのミサキの手首を掴み、口を塞ぎ部屋の中へと引きずりいれた。

「ここでオマエに騒がれるとみんなを裏切る事になんだよ!
とりあえず落ち着いて話しようゃ・・・。」

ミサキに抵抗するような様子はなかった。

「オレはなぁ、はっきり言ってぶち切れそうに怒ってんだよ。
でもなぁ、まずは冷静に話ししようゃ。」

「・・・はい」

「最初に聞いておきたい事があるから、正直に答えろよ?
ここにオマエが居るのはオマエ自身の意思か?
オマエがウチのあかねと連絡を取らなくなったのは、オマエの意思でか?
オマエがウチの店を逃げて出て行ったのはオマエ自身の希望か?
オマエと一緒に居なくなったウチの常連の多田ってオトコはオマエのオトコなのか?

最後に、

・・・オマエは何処まで堕ちて行く気なんだ?」



ミサキは声を押し殺して泣き崩れた。

どのくらい泣いていたのかは覚えていないのだが、ひどく長い時間に感じた。

しばらくし、目を真っ赤に腫らして顔を上げミサキが最初に話した言葉は

「ミクは元気にしてますか?」

だった。

その言葉に何ともいえぬ安堵感を感じたことは今でも覚えている。
母と子の絆を捨ててしまうまでミサキは地に堕ちていなかった。

「ミクはウチで元気にやってる
明日俺たちは大阪に帰る、ミサキはどうしたいんだ?
オマエが今置かれてる立場、状況、すべて抜きにして正直な気持ちを聞かせてほしいんだょ・・・」

「でりさんの他にもここへ来てるんですか・・・?」

「あかねと勘蔵さんとオレは昨日から、それに鎌田のおっさんも今日やって来た」

再びミサキは泣き崩れて、声にならない声で

「・・・ミクに会いたいです。」

そう言った。


「多田ってオトコの事だけどな、ミサキは分かってたのかもしれないけど相当の悪人だったみたいだな。
ののじいが居所掴んでくれてな、勘蔵さんと二人で乗り込んで行った場所はなぁ、”よからぬ”事務所の一室だったらしいゎ。
お前と同じような被害を受けた ”被害者” がわんさか居るらしい。」

「・・・被害者」

「そう。被害者」

「・・・そうですか」

ミサキにはこれだけで全てが理解出来たようであった。

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