デリヘル人情劇場 『絆』 最終話
2003年3月29日「でりさん足震えた?
達也さん怖いもんね〜〜」
「あかねちゃん。
今日の僕はノリノリだって言っただろうが。
達也兄にビシッ!っと言ってやったに決まってるだろうが、
あかねにもオレの勇士を見せてやりたかったぞ!」
帰りの車内はいつもの【BRUTUS】に戻っていた。
この数ヶ月間様々な事が起こり、
一時は店が崩壊するのではないか?
そこまで思いつめた事もあった。
その張本人は横に座るヤツではあるが、責める気は無い。
コイツはこいつなりに考えて、行動した。
あかねとはこの店を立ち上げる時からの付き合いであり、一番信頼できる人間でもある。
最初は泣き虫だったあかねが、時とともに店の女の子に頼りにされ信頼されてゆく姿があった。
ほんのちょっとした過ちから今までの生活がガラッと変わり、
このような世界で働くしかなくなった人間は数多くいる。
そこから、また元の生活に戻れるかどうかは本人次第でしかない。
人間(ひと)が変わってしまうのに時間は必要無い。
が、元に戻るには時間と自覚が必要になると思う。
あかねは確実に私の知らない本来のあかねに戻っているのだろう。
事務所に戻ると
「みんなで焼肉屋【源八】に行ってます」
という置手紙があった。
店に入ると、
「親分さん、ご苦労さまでヤシタ!」
顔を紅く染めた勘蔵さんが迎えてくれた。
「でりサン!レイカの横空いといたアルョ!座ってクンナセ!」
相変わらず少々日本語のおかしい麗華が満面の笑みで言う
そして輪の中心にはミサキがいる。
彼女の胸にはこのドンチャン騒ぎの中、ぐっすりと眠るミクがいる。
騙されると気付きながらも男女の絆に溺れかけた者がいる。
どれだけ離れても母と子の絆を忘れない者がいる。
社会からどんな目で見られていようが仲間との絆を守る者がいる。
社会が忘れかけている絆に結ばれた仲間がある。
闇夜に生きる者達の生き様がここにある
「今日はオレのおごりだから特上カルビ15人前追加しとけ!!」
ここには『絆』がある
デリヘル人情劇場 『絆』
おわり。
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