デリヘル人情劇場 『放免桜』 ♯00 プロローグ
2003年5月21日ほんの数名にしか知られていないのだが、
多くの思い出と、多くのこころが詰まった一本の桜の木がある
その桜は今でも毎年満開の華を咲かせている。
多くの思い出と、多くのこころが詰まった一本の桜
この桜木を『放免桜』という。
大川の流れる都島区桜ノ宮
ここは桜の名所で有名である。
この時期、花見の見物客で賑わうこの川縁だが
やっと陽の昇ったこの時間に、まだ人影はまだらであった。
「ワシものぉ、デカの頃には数知れない人様の人生に首を突っ込んだ。
でり坊、ム所から放免になってお天道様の下に出てくる人間はのぉ、
この桜の時期が一番多いんじゃのぉ・・・
何故だか分るかぁ?」
桜並木に並ぶベンチに腰を下ろし、当店【BRUTUS】の相談役である鎌田のおやじがゆっくりと話し始めた。
「さぁ・・。 なぜです?」
「桜はのぉ、心を思い出さすんじゃょ。日本人の「こころ」をのぉ。
閉ざされた塀から出て、この時期放免になったヤツらはのぉ、
多くが桜の咲く場所へ足を運びたくなるという。
そして桜木を拝んでのぉ、自分の犯した罪を今一度こころに刻み込み、
来年もこの桜を拝めるよう人生一からやり直す。
桜の花は日本人に刻まれた「こころ」が宿っておるんじゃのぉ・・・。」
桜の木の下で宴会をしたという記述は『日本書紀』にも書かれている。
太古から桜は日本人に愛され、親しまれてきたのだろう
桜は日本人の「こころ」をずっと癒してきている
「一度罪を犯した人間が、例えその罪を償って放免になったとしてものぉ、
本当の放免はやってはこないんじゃのぉ・・・。」
「本当の放免ですか・・。」
「そいつに命ある限り、本当の放免はやっては来ない。
そういうことじゃの・・・」
この鎌田氏は元刑事であった。
定年を前に退職をし、今は小さな探偵事務所を開き生活の糧としている。
話の最後に「の」とか「のぉ」と言うのが彼の口癖であり、
店の者達は彼を「ののじぃ」と呼んでいる。
「でり坊。今年の桜もよぅ咲いとるのぉ
この桜はのぉ、『放免桜』じゃ・・・
勘蔵にものぉ、やっと本当の放免がやってきたわぃ・・・。」
ベンチから立ち上がり、一本の桜の木をポンポンとたたき、
ののじぃはゆっくりとまたベンチに腰を下ろした。
「でり坊、オマエさんの事もなぁ、ちいと調べさせてもろうたわぃ。
オマエさん、もう全て終わっておろうが・・・。」
ののじぃの言いたい事はよくわかった。
私にもこの風俗という世界で働く理由があった。
たまたま結果が風俗という闇夜の世界だったのかもしれない。
だがその根本の理由はデリバリーヘルス【BRUTUS】で働く女性従業員たちと同じである。
この仕事を長々と続けられるものではない。
また、続けてゆくものではない。
「そうですね。私もそろそろ引き際ですね」
勘蔵さんのために名付けられたこの「放免桜」の下で、
この世界での散り際を見定めた。
多くの思い出と、多くのこころが詰まった一本の桜の木がある
その桜は今でも毎年満開の華を咲かせている。
多くの思い出と、多くのこころが詰まった一本の桜
この桜木を『放免桜』という。
大川の流れる都島区桜ノ宮
ここは桜の名所で有名である。
この時期、花見の見物客で賑わうこの川縁だが
やっと陽の昇ったこの時間に、まだ人影はまだらであった。
「ワシものぉ、デカの頃には数知れない人様の人生に首を突っ込んだ。
でり坊、ム所から放免になってお天道様の下に出てくる人間はのぉ、
この桜の時期が一番多いんじゃのぉ・・・
何故だか分るかぁ?」
桜並木に並ぶベンチに腰を下ろし、当店【BRUTUS】の相談役である鎌田のおやじがゆっくりと話し始めた。
「さぁ・・。 なぜです?」
「桜はのぉ、心を思い出さすんじゃょ。日本人の「こころ」をのぉ。
閉ざされた塀から出て、この時期放免になったヤツらはのぉ、
多くが桜の咲く場所へ足を運びたくなるという。
そして桜木を拝んでのぉ、自分の犯した罪を今一度こころに刻み込み、
来年もこの桜を拝めるよう人生一からやり直す。
桜の花は日本人に刻まれた「こころ」が宿っておるんじゃのぉ・・・。」
桜の木の下で宴会をしたという記述は『日本書紀』にも書かれている。
太古から桜は日本人に愛され、親しまれてきたのだろう
桜は日本人の「こころ」をずっと癒してきている
「一度罪を犯した人間が、例えその罪を償って放免になったとしてものぉ、
本当の放免はやってはこないんじゃのぉ・・・。」
「本当の放免ですか・・。」
「そいつに命ある限り、本当の放免はやっては来ない。
そういうことじゃの・・・」
この鎌田氏は元刑事であった。
定年を前に退職をし、今は小さな探偵事務所を開き生活の糧としている。
話の最後に「の」とか「のぉ」と言うのが彼の口癖であり、
店の者達は彼を「ののじぃ」と呼んでいる。
「でり坊。今年の桜もよぅ咲いとるのぉ
この桜はのぉ、『放免桜』じゃ・・・
勘蔵にものぉ、やっと本当の放免がやってきたわぃ・・・。」
ベンチから立ち上がり、一本の桜の木をポンポンとたたき、
ののじぃはゆっくりとまたベンチに腰を下ろした。
「でり坊、オマエさんの事もなぁ、ちいと調べさせてもろうたわぃ。
オマエさん、もう全て終わっておろうが・・・。」
ののじぃの言いたい事はよくわかった。
私にもこの風俗という世界で働く理由があった。
たまたま結果が風俗という闇夜の世界だったのかもしれない。
だがその根本の理由はデリバリーヘルス【BRUTUS】で働く女性従業員たちと同じである。
この仕事を長々と続けられるものではない。
また、続けてゆくものではない。
「そうですね。私もそろそろ引き際ですね」
勘蔵さんのために名付けられたこの「放免桜」の下で、
この世界での散り際を見定めた。
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