デリヘル人情劇場 『放免桜』 ♯07
2003年5月28日麗華はまどかの最期の第一発見者であった。
本当なら今頃まどかと共に久しぶりに「イマドキ」の女の子と同じように街を歩いていたはずだった。
麗華にとってこのことがどれだけショックであったかは容易に想像がつく。
言葉を失ってしまった麗華は一粒一粒の涙に悲しみの全てを詰め込み枯れることなく啼き続けた。
まどかの教育係りであったあかねは人目を気にする事もなくただただ大声で悲しみの全てを吐き出した。
まどかに一番最初に会ったのは面接の送迎に向かった勘蔵さんであった。
「ぃや〜親分さん。あの客人、車で一言もしゃべりャせんですぜ・・・
アッシが粗相でもしちまいましたかなァ・・・
ム所に新入りでへぇって来る(入ってくる)奴よりも、暗ェ顔つきですゼェ・・・
アッシは車の中で首でもかっ切らねぇかハラハラいたしやした・・・」
勘蔵さんが当店【Brutus】に入店し、一番最初の仕事がまどかの面接の送迎であり。そしてまどかの第一印象をそう語った。
その後も勘蔵さんはまどかと仕事を組むことが多く、孫を見るかのようにしばしば気に掛け、またまどかも勘蔵さんを信頼し慕っていた。
故に思い入れは大きい。
勘蔵さんは手に持つハンドルを震わせながら、見つめる視線を涙で歪めた。
事務所に戻り泣き声だけがただ響き渡る時間が流れる
どれ位経った頃だろうか、
朝から現場へと行っていたシホがドライバーに抱えられ事務所へと戻ってきた
シホは目を腫らし私の胸に何度も何度も拳をぶつけそのまま床に崩れ落ちる
シホはまどかと同い年の19歳である。
シホはまどかが入店した頃には既に風俗の隅々まで知り尽くし、風俗の世界では「知る人ぞ知る」という存在にまでなっていた。
シホはまどかに「風俗」という世界の全てを教え、まどかの風俗嬢としての成長だけではなく、生き方への考えにまで全てを語り合っていた。
「あの、でりさん。ポストにこんなものが・・・。」
シホを連れて帰って来たドライバーが
ポストに入っていた一通の封書を手渡した。
その封書はまどかが私達に宛てて書いた、最初で最期の遺書(てがみ)
でした。
コメント