足先から脳天にまで電気が走る
まさか本気で言ってる訳はない。
私を試そうとしているのか?何かの思惑があってのことなのか?
全てが理解できず、何をどうしてよいのか「無」に陥る。

「悲しくはないのですか?」


やっと出た言葉は言葉にならなかった
「ムシが死んで悲しむ人を君は見たことがあるのか?
私は・・・。
・・・・・・・・・無いな。」


何も理解できぬまま、ただ本能だけで立ち上がり拳を握った。
これほどまでに頭が真っ白になったことは今まで、この先無い。

ここがどこなのか?
一体何をしにここへきているのか?
辺りを見渡せど何も見えない。

ただ焦点は正面にある能面にだけピントが合っていた。

『オレは何をしようと思っているのか?コイツを殴るのか?
殴っていいのか?殴らないべきなのか?オレは何してんだ?』

そんな事が頭の中で廻っていたいた気がする
完全に思考回路が潰れていた私が正気に戻ったのは、
肩に添えられた手と、心地のよい香水の香りだった。


「社長。お忙しい中、申し訳ありません」

どこまでも冷静で落ち着いた声になだめられる様に、肩に添えられた手の力のままソファーに腰を下ろした。
そして私が座ったのを確認し終え、雨宮氏に一礼をしゆっくりと麗華が私の横に座った。

「まどかさんの第一発見者の麗華と申します。
この度は本当に悲しい事となってしまいました。」

麗華が雨宮氏に話し始めた時、そっと私の手に一枚の紙切れを握らせた。
その紙切れにはおそらく私立探偵の鎌田さんが調べてくれたであろう雨宮氏に関する情報が書かれていた。

「もしよろしければ、まどかさんの葬儀の場所と時間を教えてはくれませんか?私達のようなものでも人の心が通っております。お線香の一本でもあげさせていただきたいのですが・・・」

麗華が丹誠を込め話す”日本語”にはどこか迫力がある。
有無を言わせぬ筋が言葉に通っている

だが、雨宮氏はそんな麗華の言葉に顔色を変えることはない。

「葬儀?誰の葬儀だ?私に葬儀を挙げる様な人間はおらん!
何度言ったら解るんだ!警察に行ったのも義理だよ、義理!
いいかげんにしてくれ。私は忙しいんだ、もう失礼させてもらうぞ」


一度は堪えた感情が再び湧きかえるのに時間は必要としなかった。
だが、私よりも更に早く頭に来ていた人間が私の背後から雨宮氏へと向かっていた。



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