デリヘル人情劇場 『放免桜』 ♯12 ♯13
2003年6月14日この話を書こうと思ったのはもうかれこれ一年ほど前になります。
いつの間にやらライフワークのように感じながら、
あの日を想い起こし私なりに魂を込めながら綴ってきたつもりです。
そして、今回の♯12はこの話を書き始めて一番最初に
【放免櫻】というタイトルのフロッピーに書いた文面です。
全てはここからスタートし、
話を思い起こしながらやっとここまで辿り着きました
ゴールが見えた・・・
そんな気分ですね。
♯13はこの一年ネットという世界の中に埋めるか埋めないか、
よく考えた挙句に、まどかの残した最後の思い、「遺書」に綴られた一節を秘密日記という形ではありますが、埋める事としました。
相互リンクしていただいている方のみにしか見れませんが、自身のHPに纏め上げた時にはどなた様にも見れる格好で載せるつもりです。
皆様にはもう少しだけ私の思い出にお付き合い願えるなら光栄と思います。
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デリヘル人情劇場 『放免桜』 ♯12
まどかの通夜に雨宮氏が訪れることはなかった。
店の回線全てを携帯電話に転送し、デリバリーヘルス【Brutus】
はまどかの傍で今夜も営業を続けた。
「親分サン。まどかは手紙に、ウチに来て初めて生きる事が出来た・・・
そう綴って逝っチまいヤシタ。
アイツが生きた一年がこの店で過ごした一年なら、
どうぞ今宵も派手に営業してオクンナセェ。
勘蔵の願い、叶えてやってはもらえませんかィ!」
勘蔵さんの提案に否定する者は誰もいなかった。
今夜公休の者達は祭壇の灯を守り、
出勤の者達は一言「まどか!行って来るよ!」
と声を掛け、闇夜に消えてゆく。
「ササッ!姐さん!湿っぽくならずに今夜もパーッ!と行きヤショウ!
お仕事終えた姐さん、ご苦労サンデヤシ!
ササッ!一杯ェググッとググッとぉぉお!!」
これほど酔った勘蔵さんは見たことが無かった。
娘のように可愛がり、誰よりもまどかを気にかけたのは、
紛れも無く勘蔵さんである。
「煙草を買いに行くの付き合ってくれません?」
珍しく麗華が綺麗な日本語で言う。
まだ肌寒い月夜はアルコールで火照った身体に心地よく感じた
「でりサン。マドカチャン、何故死んだデスカ?
麗華ワカラナイですョ・・・。
ズットズットみんなと働くコト何故ダメデスカ??
麗華ワカラナイですョ・・・。」
「まどかはな、きっと怖かったんだょ。」
「怖かったデシか?」
「この世界で出会っても、いつかはみんな離れ離れになるってことをまどかは知ってたんだよ。
もう一人にはなりたくなかった
それ位まどかは麗華のコトも、あかねも、シホも、それから勘蔵さんの事も好きだったんだよ。
他にも理由は沢山あるだろうけどな、
それくらい俺達はまどかに大事に思ってもらえたんだ、
この先何年も何年も生きて、
それ程までに思ってもらえる人に何人出会える?
俺らは幸せ者なんだょ。
だから勘蔵さんは今夜はパーッと行こう!って言ってんだ。」
「スキだから死んだアルカ・・・。」
「そう。そういうこと!
死ぬほどスキ!ってよく言うだろうが
それなんだよ・・・。」
酔いに任せてそんな風に麗華に説明をした
こころに曇りのない麗華がこんな説明をどう感じたかは解らない。
だが自動販売機の蛍光灯に浮かび上がった麗華の姿は、
いつもの麗華に戻っていた。
フッッー
私の火種から移った麗華の蒼煙がゆっくりと天に昇っていった
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