23時56分
大阪駅のホームをゆっくりと列車がすべり出す。
東京発-大分行き【寝台特急 富士】 B寝台の狭い座席に腰を下ろし、
次第に遠のく街明かりを見送る。

まどかのコトはやはり精神的にショックが大きかった
特に麗華は表面上では平静を見せてはいたが、やはり精神面での落ち込みが隠しきれない様だった。

「麗華よぉ、暫らく仕事に出てこなくていいから、どっか温泉でも行ってゆっくりとしてきな。湯に浸かってうまいもんでも喰って、じっくりと体を休めてから戻ってこい。これはオレからの命令」

その言葉に対し、麗華はあまりに素直に答えた

「アリガトウでし・・・。ユクリね麗華させて頂きマスアルョ」

麗華に言った言葉は、そのまま私がしたい事であった

暫らくのんびりと、気持ちをリラックスできる場所に行きたい・・・。
それが本心であった。

麗華はそれから10日程事務所に現れなかった。


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「でり坊のぉ、お前さんに依頼を受けとった人のぉ、
やっと見つかったでのぉ
これ住所やけの、お前さんに渡しとくぞ」

麗華の留守の間に鎌田のおやじがひょっこりと姿を現した。
鎌田のおやじとはもうご存知の通称「ののじい」
言葉尻に「の」とか「のお」を付ける。
彼は元立派な刑事であり、元当店【Brutus】の客であり、
現私立探偵を生活の糧としている現【Brutus】の相談役である。

麗華と勘蔵さんはこの、ののじいが連れて来た人材であり、
当店とは切っても切れない間柄なのである。

ののじいから手渡された一枚の調査書には、
確かに私が探してほしいと頼んだ人物の報告が書かれていた。

「これって何処なんです?」

「大分県の別府じゃのぉ、当人今のぉ、
別府の温泉街のとある旅館で仲居をやっとるわぃ。
どうやら全国各地を転々としとるようじゃのお」


麗華が少し元気になって戻ってきたのを機に、
私も暫らく店を離れようと思った。

列車が神戸を過ぎ、車窓の景色が黒一色に染まる頃、
レールの継ぎ目を車輪が規則正しく越えてゆく
「カタンコトン」
という音に次第に眠りに堕ちて行くのであった。



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