火曜サスペニス劇場『スッポンポンの女』前編
2003年7月23日暗い闇夜には、様々な人間が渦巻いているようでして
男が電話をしてきたのは、午前も0時を回った頃であった。
「BRUTUSでございます」
「あぁ、今から一人女の子をお願いしたいのですが・・」
「ありがとう御座います。女の子のタイプはどのような感じの子がご希望でしょうか?」
当店BRUTUSの受付嬢の麗華が流暢な”日本語”で対応をする。
彼女は日系の中国人であり、普段は”中国語訛り”の日本語がお得意だ。
「特に希望はないが、明るくて元気な娘がいい。
できれば細めでお願いしたい」
「お客様のご希望にピッタリな女の子がおります。
お時間30分ほどでご宿泊先に伺います。」
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「でりさん、麗華アルヨ〜。
ナナチャンお仕事入っタね〜!浪速区のホテル○○デシよ〜!急行ネガウ!」
私とドライバーの勘蔵さん、そして当店の元気印の風俗嬢ナナは遅まきながら夕食をしていた。
「すんません!ここの注文キャンセルで!」
「えー!うどん食べてから行こうよー!」
「うどんと仕事どっちが大切なんだよ」
「うどんに決まってんじゃん!!」
「テメーは道頓堀にほうり投げるぞ!」
「だってどう見てもアタシ達のうどんはもう直ぐ来るってば〜」
「俺らは時間が勝負なんだよ!待たせた客はリピートで帰ってこないんだよ!んなことくらい解るだろ?」
「じゃぁうどんフルスピードで食べるから!」
根はいいヤツなのだがこのナナとしゃべるといつも口論となってしまう。
まぁこれが彼女とのコミュニケーションの方法でもあるのだが・・・。
「じゃぁ何か?ここのうどん屋のオヤジが、俺らの注文した品作る前に、ヘィ!アッシの賄い喰ってからお客の品お作りしますので少々待ってくださいな!なんて言うのか??んなヤツいねえだろが!」
「まぁまぁ親分サンもソレくれぇでェ〜。ナナお嬢さんもぉ、ここは勘蔵の顔を立てるおつもりでぇ、ね、ね、行きヤしょう!」
割って入るのは70をゆうに超えているであろう男、勘蔵さんである。ワケアリで当店へとやって来た彼は任侠と言う言葉の似合いすぎる男であった。
「勘ちゃんがそう言うなら我慢してあげよう!
この仕事終わったらちゃんとご飯食べさせてよ!でり君分かった!?」
ナナは当店の立ち上げのメンバーの一人であった。
初期のメンバーは私のことを「君」付けで呼ぶヤツが多い。
店をここまでにするのに、共に苦労してきた仲間である。
「分ったからさっさと車に乗れっての!」
「いたーい!もぉーーーー!」
ナナの頭を”はたき”車に乗せる。
同じ初期のメンバーで今ではクレーム処理を主に引き受けるあかねとは逆に、このナナは未だトラブルメーカーだ。
だが、この持ち前の明るさと真っ直ぐな性格から、
彼女を嫌うヤツは皆無に等しい。
「お客はミナミという名前で、部屋は402号室。
コースは未確定なのでロングをがんばって取ってこいょ!じゃぁヨロシク!」
「ほぃほぃ。それではナナはお客様に今日も『本物』の愛をお届けしてまいりま〜す!」
ナナお決まりの台詞を後にホテルへと消えてゆく。
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